青色図書館

2004年1月から2008年8月まで、 青の好きな私が綴った日々のあれこれと写真たち

*小説

流血女神伝 喪の女王?

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須賀しのぶ/イラスト:船戸明里/集英社(コバルト文庫)/税込\540-

前巻からの逃亡劇が続く中、カリエ自身がとうとうユリ・スカナの中枢にまで引きずり込まれていく展開までが描かれていく本書。
物語の本編から目が離せないほか、登場人物たちの心の葛藤、幻の外伝となってしまった女王バンディーカの生い立ち、深く語られることのなかったサルベーンとユリ・スカナの縁と、サイドストーリーも満載。
特に宗教色の強いこのファンタジー、おおとりにカーテ神教を迎えました。
今まで様々な宗教に属し、ザカリア女神に翻弄されてきたカリエは、カーテの神々とどのように向き合っていくのか。注目です。

<この本のカバーあらすじ>
森の中で逃亡生活を続けるカリエ。途中で同行することになった伯爵と息子フィンルの存在は、厳しい旅をなごませてくれていた。だが、それも束の間、フィンルを追ってミゼーマ宮の兵士が現れた。なんでもフィンルは王太子ネフィシカの実の息子であったという。驚くカリエだったが、その兵士らを娘のセーディラが恐るべき力を放って撃退するのを目の当たりにして、さらなる衝撃を受け--。

「沼地のある森を抜けて」

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梨木香歩/新潮社/装画:牛島孝 装幀:新潮社装幀室/税込\1,890-

「からくりからくさ」の方が好き。
私の独断と偏見、というより単純な私の嗜好だと思う。
いの一番にこんな暴言ですいません、でも私は心からの梨木愛読者です。
例に漏れず、新刊時期に買って今まで暖めていました(笑

梨木さんを愛読している方は皆さんぴんときてるのでしょう、この本の命題は直前に出版されているエッセイ「ぐるりのこと」で彼女が深く思考を及ばせたテーマと結びついています。
そして彼女が言葉を紡ぎ続ける永遠のテーマなのだと改めて思いました。
初期の作品から、「つながり続ける生命」という旋律が奥深くで響き続いているように感じます。
「からくりからくさ」でマーガレットの身の内に生まれた生命、「ミケルの庭」でこの世に生まれ世界につながっていく生命。
あの「ミケルの庭」で描かれたミケルの開かれている心のあり様の続きが、今の梨木さんはこんなふうに言葉を紡いでゆくのか・・・
好みより何より、壮大な展開を見せる今回の梨木ワールドにただただ惹きつけられるのです。

「からくりからくさ」の日常の風景を愛しているので、それとはまた風合いの違う風景が広がるように感じます。それは、「ミケルの庭」を読んだ時に既に感じていたので、梨木氏の文章の風向きがまた少し違う色を加えたのかもれません。
それにしても、毎回ネタバレ的ですいません。

<この本の帯>
(表)はじまりは、「ぬかどこ」だった。
   先祖伝来のぬか床が、うめくのだ---
   『からくりからくさ』に連なる、命のものがたり。
(裏)だいじょうぶだ。世界は終焉を迎えない。
   どんな形を取っても、何に形を変えても、
   伝わってゆく何かがある。
   生命は、いつか必ず、光りのように生まれてくる。

「球形の季節」

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恩田陸/新潮文庫/税込\540-/解説:小谷真里

恩田作品2作目。
系譜がありそうな作家さんは特に、出版された順番に忠実に読んでいきたい私。
そんな時に本当に有難く思うのは、ファンの方々のHP。非常に詳しい年表スタイルの作品紹介は、初心者には有難い道しるべになる。ブログ隆盛の今、HPの素晴らしさも改めて感じる。
今回お世話になっているのは、<恩田陸オンライン>さん。ページのデザインも個人的にとても好きで、コンテンツも充実しています。

小夜子の次に当たる作品で、今度は物語は「学校」という枠から「地方都市」という枠に拡大している。
でも、閉じられた小規模の空間、というスタイルは何も変わっていない。というより、さらに密度を深めている。
閉じられた、狭い、でも深く密度も濃くて、完璧にその中は満たされている。まさに球形という言葉がしっくりくる世界。
またもや、読者はそれぞれに思い当たる節がありながら、物語に引き込まれていく。
「学校」と同じで、生まれ育つ「故郷」というものも、ほとんどの人が持っている。作品の中でみのりが言っていたように、生まれ育った環境を自分の身の内のどこかにひきずる、それが土地の持つ不思議で少し恐ろしく、また温かいものだと思う。
この作品ではたまたま東北の地方都市のそれだが、私たちはなんとなく土地の持つそれぞれの雰囲気や根っこをどこかで感じているからこそ、この物語に各々の深みを持って読み進んでいくところがあるように感じる。
展開は小夜子の方が好きだけど、恩田作品は物語だけを楽しもうとしても色々深く感じるところがあるので、読んでしばらくすっと深いところまで(自分の)行く時間がある。
そういう意味でも非常に興味深い作家さんだ。

<この文庫本の裏書>
四つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が広がった。「地歴研」のメンバーは、その出所を追跡調査する。やがて噂どおり、一人の女生徒が姿を消した。町なかでは金平糖のおまじないが流行り、生徒たちは新たな噂に身を震わせていた……。何かが起きていた。退屈な日常、管理された学校、眠った町。全てを裁こうとする超越的な力が、いま最後の噂を発信した!新鋭の学園モダンホラー。

「流血女神伝 喪の女王?」

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須賀しのぶ/イラスト:船戸明里/集英社(コバルト文庫)/税込\500-

ここ数年来、私の「最も続きが気になる小説」ナンバーワンの座を欲しいままにしているこのシリーズ。
どのくらい欲しいままにしてるのかしら?と、シリーズ最初の巻「帝国の娘」の巻末を見たら、初版1999年7月10日。足掛け6年、7年目に突入かぁ、と感慨もひとしお。
この「喪の女王」にて、やっと最終章に突入しました。
シリーズが始まった頃の興奮も冷めやらぬ、といった感なのですが、やはり月日の流れが速いのは読書時間でも変わらぬよう。
これにてシリーズ21冊目に入りましたので、ファンタジー大作に浸りたいと思っている方にはかなりオススメです!(・・・)

少女時代愛読していたコバルト文庫、実質唯一読み続けている作家さんである須賀さんは、尊敬する作家さんの一人です。
彼女の作品のファンの方ならご存知の通り、上智の史学科卒という学歴を掲げずとも歴史や文化の知識が行間から溢れ出るストーリー。
それでいて、コバルト読者に愛されるユーモラスでコミカルな展開もあり。(「乙女ちっく」とか「ときめき」とかはどうか分からないけど(笑)
読者の想像を爽快に裏切り、読者の期待を大いに満足させてくれる、そんな作家さんです。

この作品に私が惹かれ続けている最大の魅力は、まるでこの地球上の大国の栄華盛衰、神々の神話と宗教の縮図を見るかのようなかなり濃密なファンタジーだというところ。
須賀さんは、ファンタジーを描きながらかなり政治色の強い世界観を繰り広げる方で、これがコバルトかと目を疑うこともしばしば。
この女神伝のシリーズは、政治に加え、物語中の各国の宗教観、神々の逸話まで丹念に描かれていて、そのストーリー性が本当に面白い。
<激動のサバイバル・ファンタジー>なんて集英社には冠されてますが、それだけじゃありませんぜ、と私なんかは思うのです。

さて今回は最終章2冊目となりますが、中盤ちょいまではこの作品にしてはなかなかなだらかな展開。「やはりクライマックスはザカール崩壊までだったか・・・」なぁんて杞憂はラスト間近で見事に打ち砕かれました。
須賀さんありがとう、まだまだ結末は先ですね!と嬉しくなる始末。
最終章になってその全貌を現し始めたユリ・スカナ王国の行く末に、読者も主人公も当分翻弄されそうです。

<この本のカバーあらすじ>
カリエが産んだのは、女の子だった。ザカールの宿命に従えば、男児であったはず。これは新たな女神の思惑なのか?戸惑いながらもカリエは我が子を守るため、再び逃亡生活に入る。一方、首都ガンダルクでは、女王バンディーカがその座を長女ネフィシカに渡そうとしていた。婚儀には妹グラーシカもルトヴィアより帰国し、国中が歓喜に沸き返る中、思いがけない謀略が着々と進行していた-。

「六番目の小夜子」

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恩田陸/新潮文庫/税込\540-/解説:岡田幸四郎

ここ数年来、読みたくてでも順序だててたくさん読みたいから我慢していた恩田作品。
やっと伝説のデビュー作を手に取り、先ほど読了しました。・・・面白かった!
それにしても恐かったです。
実際にそこまでの恐怖的な惨事が描写されているわけでもないのに、この心理にじわじわくる恐怖ったら。
改めて「学校」という場の恐ろしさを思いました。

「学校」という閉じられた空間の中に渦を巻く、不特定多数の個が作る終わりのないひとつの輪。
学校というところは、「火の無いところに煙がた」ったり、「火のあるところに煙がたたな」かったりする本当に特殊な場だと思う。
集団の心理、それを必然的に構築していく個の心理。
この「サヨコ」のゲームに私たちの背筋が凍るのは、ほとんど私たち全員が、「学校」という場の闇を意識的にしろ無意識にしろ、嫌というほど知っているからに他ならないと思う。
でももちろん、青春時代というきらきらしたつかみようがない眩しい時間も、読者は存分に味わうことが出来ます。
閉じられた空間だからこそ、あんなにも輝いていたのかなぁと思うことも。
最後に、物語中唯一芝居のタイトルにしか登場しない「小夜子」という字(人物?)に、うっすらと恐怖を煽られています。

<この文庫本の裏書>
津村沙世子--とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。
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